エフエム山口パーソナリティ 新井道子さんの体験談

子宮体がんを経験した私が みなさんに伝えたいこと

~体は必死にサインを出していたのに、
今の私ががんになるはずがないと思っていました~

新井 道子(あらい みちこ)さん
新井 道子(あらい みちこ)さんの写真

エフエム山口の看板パーソナリティとして長きに渡り活躍。2022年に子宮体がんを患い休業を余儀なくされるも、子宮・卵巣全摘出手術と広範囲のリンパ節の切除、そして半年以上の抗がん剤治療をし、見事に現場に復帰。

現在もレギュラー番組を持ちながら、自身の体験を活かし、定期健診や早期発見治療の大切さを放送やイベント等で発信している。

がん発覚までの経緯を教えていただけますか。

不正出血があったので病院を受診しました。検査後、先生からは「様子を見ていきましょう。3ヶ月ごとに検診に来てくださいね」と言われていたにも関わらず、「様子を見る」=「大丈夫」だと自分の中で置き換えていたんです。病院からも悪性という診断ではなかったので勝手に私は大丈夫だ、がんではないと思っていました。そしてコロナ禍でもあったため、そこから1年半以上放っておいてしまったんです。不正出血は続いていたけれど、更年期でもあったのでホルモンの変化だろうと思っていました。ところがただならぬ出血が続いたので病院へ行くと、「がんがありました」と告げられました。ずっと予兆があったのにも関わらず、いろんな理由を言い訳にしてちゃんと向き合わなかったため、ステージ3C-2というステージ4のひとつ手前にまで進行していました。

分かった時はどんなお気持ちでしたか?
一番初めに思われたことはどんなことでしたか?

すぐに母に心配させてしまうって思いました。どうやって言おう、そればかりを考えていました。

ご家族はどんな反応でしたか?

私一人で母に直接言うのは怖かったので、事前にいとこや叔母に説明をした上で食事会の場を設けました。「実はね、」と話すと母はぽかんとしていましたね。その日は口数がすごく少なくなりました。相当ショックだったと思います。

そこから病院での治療を開始されたんですよね?
どんな治療をされたのですか?

まず子宮と卵巣を全摘する手術を行いました。事前の検査で筋層への浸潤もあったため、骨盤内と傍大動脈リンパ節の切除もあわせて行いました。手術が終わった段階で、ひとまず治療は終了と聞いていましたが、取った組織を調べた結果、リンパ節への転移が見つかったため、抗がん剤治療も必要になりました。すぐに会社に復帰するつもりでいましたが、抗がん剤治療も受けたため、9カ月ほどのお休みをいただくことになりました。

不安なことはどんなことでしたか?

自分がこの先どうなっていくのか、本当に元気になるのか、 仕事に戻れるのかということに大きな不安を感じていました。お金のことも正直不安ではありましたが、保険に入っていたのでそこはなんとかやっていけそうという安心感はありました。

不安な中、前向きになれたきっかけなどはありましたか?

治療が進む中でこの治療法が自分に合っているんだなと感じた時に先が見えてきました。このあとも生活していけるなと分かってきた頃にはどんな風に仕事に戻ろうかなとか、いつ会社に相談しようと考え始めていました。仕事が目標になっていたのは大きかったですね。

病気のことを公表された理由を教えてください。

ラジオパーソナリティや司会をさせていただく中で、がんサバイバーさんたちとお会いする機会が多くあり、お一人お一人から強さや苦悩など大事なことを学ばせていただいていました。私もメディアに出させていただいている身として、 私が誰かの何かに役に立つかもしれないと思い公表しました。ただ、公表するかどうかはあくまで個人の自由で、その意志は尊重されるべきだと考えています。

励みや支えになったものはありましたか?

病気を公表したことでリスナーさんから温かいお言葉をたくさんいただきました。「私にも経験があります」という声や、逆に「励まされています」と言ってくださる方もいらっしゃいました。お手紙や千羽鶴もいただいたりして。初めは自分一人で頑張っているつもりでしたがリスナーさん、家族、会社の方々、友人など本当にたくさんの人に支えていただきました。

治療が終わり、生活はどんな風に変化しましたか?気付いたことや心境の変化はありましたか?

思っていたほど変化はなかったですね。なんだかドラマチックにものすごく変わっていくのかなと思っていましたが日常に戻った感覚でした。今までやっていたことが今まで通りにできるということに嬉しさを感じ、元気になったんだなと感じました。ただもう無理をするのはやめようと思っています。

振り返ってこうしておけばよかったことなど
ありますか?

自分の体の声にはちゃんと耳を傾けるべきだったと反省しています。人はなぜか自分だけは大丈夫という思い込みを持ちがちですが、自分で勝手に判断せず気になることがあれば医療機関を受診することが大事だと思います。つい忙しさや怖さを言い訳にして遠のいてしまいますが、どんな理由があっても体は日々変化していくし病気は待ってくれません。やまぐち3070・ピンクリボンキャンペーンの対象である子宮頸がんの罹患者は、出産や子育て真っ最中、仕事の場面でも責任が重くなってくる30代がピークという結果が出ていますよね。自分のことは後回しにして家族や仕事を優先する気持ちは分かります。けれど家族のために自分を大切にしてほしいと思います。

最後にこれからがん検診を受けようと思っている人、そしてがんを体験した人にメッセージをお願いいたします。

まず、がんを経験された方には本当によくがんばられましたね、とお声掛けしたいです。強かったね、えらかったねと褒め合いたいです(笑)。これから先もきっと不安はあるし何が起こるかは誰にも分からないけれど一人じゃないことを忘れず、これからも自分を大事にしていきましょうね。
そしてこれからがん検診を受けようと思っている方には、結果に関わらず、検診は定期的に受け続けてほしいと伝えたいです。病気になる可能性は誰しもあるため、安心を買うと思って受診してほしいです。お住まいの市町で気軽にがん検診を受けることができますので、ぜひ行ってみてください。そして、身近な人からの「検診受けてね」のあたたかい言葉には、受診への背中を押す力があると思います。あなたの大事な人へも是非受診を勧めてくださいね。